研究

細胞の形づくりのデータ駆動型研究

細胞は自らの意思で力を使って動き、自身の形づくりをします。その意思決定過程をデータから解明します。先行研究で見つかった原理(例えば分子間相互作用からなる双安定)を何でもかんでも当てはめるのは数理駆動であってデータ駆動ではありません。私たちは、実験データをじっくり観察し、分子以外の物理量もシグナルと捉え、細胞の形作りのデータ駆動型研究を行っています。さらに読む⇒

医療ビッグデータを活用した疾患予測と疫学の研究

医療ビッグデータや医療画像を用いて、複数の疾患に対する予測モデルの精度を高め、疫学的知見の拡充を図ります。特に脳腫瘍、早産、脳梗塞、心筋炎など、重要な疾患を対象に、機械学習技術を用いた疾患予測や、状態遷移の可視化を行っています。これにより、疾患の早期発見や進行予測が可能となり、効果的な介入が可能になることを目指しています。


遺伝子発現時系列データを用いたネットワーク推定

発達過程の遺伝子間相互作用に関する研究はこれまでも行われてきました。近年は、発達過程における遺伝子発現の時系列が得られるようになり、より多くの情報が扱えるようになりました。私たちは、多くの種類の遺伝子の発現時系列を用いて、遺伝子間相互作用の推定を試みています。特に、ニワトリ神経管の発達、マウスの卵母細胞の発達、神経疾患に関係する遺伝子ネットワークの推定を行っています。

ばらつくデータ、個別に観測されたデータを統合する手法開発

細胞は同じ条件でもばらついた応答をします。また、複数種の分子や表現型は同時に観測できず、個別に観測されたデータとして集められます。そのような「ばらつき」と「個別観測」は解析する上で大きな問題です。生物学一般に発生する問題です。これらは実験研究者が解決するものではありません。データ駆動型生物学で解決を目指します。さらに読む⇒

ヒトの呼気成分データを用いた機械学習による疾病診断

運転手の血中アルコール濃度は、呼気で計測されます。呼気成分は肺胞で血中成分から抽出されるからです。それなら、血液検査のような侵襲検査でなくても呼気検査で病気が診断できるのではないか、という試みです。医師やセンサー開発の技術者との共同で、この問題に取り組んでいます。非侵襲による精度の良い簡易検査が進めば、予防医学につながります。

牽引力顕微鏡画像を用いた細胞が生み出す力の推定

モノが変形するとき力が発生しています。細胞も力によって変形できます。細胞変形を分子情報だけで説明するのは無理があります。細胞変形をデータ駆動で行うためには、細胞の力のデータが必要です。しかし細胞の力を直接観測することはできません。私たちは、牽引力顕微鏡で観測されたデータを用いて、ベイズ統計の枠組みで、細胞が生み出す力を精度良く推定する手法の開発を行っています。

モデル生物のデータ駆動型繁殖制御

脊椎動物の発達生物学において、モデル生物の繁殖管理は重要な課題です。精密な管理を行うためには、介入実験が必要となり、研究者に大きな負担がかかります。そこで、私たちはデータサイエンスの手法を用いることで、この繁殖管理の効率化を目指しています。これにより、研究の手間を削減のみならず、対象個体におけるジェンダーギャップの是正にも貢献が期待されます。

トランスオミクス

オミクス解析と呼ばれる多分子の同時計測技術の開発が進んでいます。これにより、疾患などに関わる分子が多く見つかってきました。しかし、これらの分子を羅列するだけでは生命現象のメカニズムはわかりません。私たちは、複数のオミクスデータを用いて多数の分子からなるネットワークを構築する解析(トランスオミクス解析)を行い、データ駆動型の生命システムの解明を目指しています。

生体組織形成のデータ駆動型研究 

私たちは、生体組織の多彩な物理量よる形づくりについて解明しようとしています。生物データを観察すると、生物は外部刺激に対して微動だにしないロバスト性を持っているのではなく、鋭敏に影響を受けながらも回復して目的を達成するレジリエント性を持っていることが分かります。レジリエントな体節形成、血管新生、臓器のサイズ調整についてデータ解析と定量モデル開発を行なっています。

細胞内アクチン wave による分子輸送と局在化の解析と数理モデル

国家運営における補給や、戦争における兵站は最重要項目です。同様に細胞にとっての物資の輸送は機能発現に欠かせません。いたるところにエネルギーが落ちているわけではありません。神経細胞の画像を見ると、アクチン線維は骨格を形成するだけでなく、物資輸送(アクチンwave)を行っていることが分かります。私たちは、実験データに基づいてアクチンwaveの定量数理モデルを構築し、その数理的な原理解明を行います。

細胞画像の半自動定量化ソフト開発

人の社会では完全な法律はありませんが、問題が発生した時のバックアップ体制を整備しています。同様に、生物画像から特徴を定量するとき、完全な自動化アルゴリズムは存在しません。特定の画像に特化した自動化アルゴリズムは「過学習アルゴリズム」であり汎用性がありません。私たちは、完全自動化をするのではなく、ユーザが容易にバックアップできる「半自動」ソフトウェア開発を行っています。

制御理論と機械学習による細胞システムのリアルタイム最適制御

細胞は成長因子やホルモンなどの環境情報をセンシングして、細胞内のシグナル伝達や遺伝子発現を駆動することにより、移動、運命決定(増殖と分化)、代謝などの細胞機能を制御しています。私たちは制御理論と機械学習を用いて、環境情報を最適にデザインすることにより、細胞機能を人工的にリアルタイム制御するための解析アルゴリズムの研究を行っています。計測・解析・制御が統合化されたデータ駆動型細胞制御システムの開発を目指しています。